2025年4月より放送がスタートしたTVアニメ『ざつ旅 -That’s Journey-』。
主人公・鈴ヶ森ちかがSNSでアンケートを募り、その行き先を旅するというシンプルで自由な旅の形は、多くの視聴者に「こんな旅をしてみたい」と思わせる力を持っています。
本作の魅力は、予定調和に収まらない偶発的な出会いや風景の切り取り方にあります。
ときに人と触れ合い、ときにひとりでただ歩く。そんな旅の中で、ちかがふと見上げる空や、通り過ぎる町並みが、どこか記憶の底に触れるように描かれています。
この記事では、『ざつ旅』の作中で描かれた静岡エリアの“モデル地”を中心に、作品世界を現地で追体験するための聖地巡礼ガイドをお届けします。
作品と現実が静かに重なる場所へ──地図と物語を片手に、あなたの旅が始まります。
『ざつ旅』静岡編の舞台背景と魅力

『ざつ旅』に登場する各地の風景は、単なる「観光地紹介」ではなく、旅そのものの揺らぎや静けさを映し出す鏡のように描かれています。
なかでも静岡編では、自然の広がりと人の営みが穏やかに交差する光景が、ちかの旅の節目として印象的に映し出されました。
例えば、彼女が立ち寄った高台から見える駿河湾の光景は、どこまでも広がる空と海がひとつに溶け合うような構図で描かれ、
その風景の中で小さな弁当を広げる彼女の姿には、言葉にしにくい「ひとり旅の幸福」が滲んでいます。
この静岡編で描かれるのは、「特別な出来事」ではなく、「何も起きないこと」の尊さ。
見知らぬ場所でただ時間が流れる──そんな旅の感触こそが、ちかにとっての〈ざつ〉であり、読者にとっての〈癒やし〉となっているのかもしれません。
それでは、作品の舞台となった静岡の各モデル地を、描写と共にひとつずつ辿っていきましょう。
モデル地紹介①:静岡市・日本平と久能山東照宮

静岡市にある〈日本平〉は、『ざつ旅』においてちかが一人で訪れるシーンの中でも、とりわけ印象深い場所です。
ロープウェイで登った先に広がるのは、駿河湾の青、そして天気が良ければ富士山の雄大な姿。
その風景をただ黙って眺めるちかの姿からは、旅の途中でふと心がほどけるような瞬間の静けさが伝わってきます。
日本平の頂上には、徳川家康を祀る〈久能山東照宮〉があります。
石段を上がるちかの背中と、その先にある荘厳な社殿の描写は、現地を知る人ほど「そのままだ」と頷くほど忠実。
アニメや原作では細かな装飾までは描かれていないものの、朱塗りの柱と緑の屋根の対比は作品世界の中でも美しく再現されています。
この場所を訪れると、ちかが何を見て、どんなふうに時間を過ごしたのか、自然と想像が重なっていきます。
地元の学生や観光客の声を背にしながら、石段を登る足音だけが耳に残る──そんな空気ごと味わえるのが、日本平と東照宮の魅力です。
アクセス情報:
・JR静岡駅からバスで約40分、日本平ロープウェイで久能山方面へ。
・久能山東照宮へは、海側から石段(1159段)で登ることも可能です。
モデル地紹介②:焼津市・焼津漁港と小川港魚河岸食堂

ちかの旅が続くなかで訪れた焼津市では、漁港の匂いと朝のざわめきがそのままページに染み込んだような、そんな空気感が描かれていました。
作品内では具体的な名称は出ていないものの、背景描写や店頭の様子から、モデル地は〈焼津漁港〉および〈小川港魚河岸食堂〉であることがわかります。
朝の市場を歩くちかの足取りは、少し気だるく、でもどこか嬉しそう。
旅の疲れを感じながらも、魚の匂いや活気に引き寄せられるように足を止め、定食を頼む──その描写からは、
「目的のない旅の途中で、ふいに出会う温かさ」のような感情が滲み出ています。
小川港魚河岸食堂では、地元で水揚げされた新鮮な海鮮が手頃な価格で楽しめるため、平日でも多くの観光客でにぎわいます。
ちかが食べていたと思われる“まぐろづくし定食”は、実在メニューとして人気が高く、訪れた際にはぜひ味わっておきたい一品です。
アクセス情報:
・JR焼津駅からタクシーで約10分。
・無料駐車場あり。営業は朝~昼のみなので、早めの来訪がおすすめです。
モデル地紹介③:掛川市・掛川城と城下町

ちかが掛川市に足を運んだ回では、城の白壁が青空に映える構図と、静かな城下町を歩くシーンが印象的に描かれています。
そのモデルとなっているのが、復元天守として有名な〈掛川城〉です。
掛川城は、戦国時代から江戸時代にかけての歴史を今に伝える貴重な木造建築。
ちかが天守から城下町を見下ろす描写は、現地の展望とほぼ一致しており、彼女と同じ風景を体験できるスポットとして巡礼者の間で人気です。
また、掛川の城下町には、旧東海道沿いに残る町家や古民家カフェなど、時代の流れを静かに感じさせる街並みが広がっています。
ちかが歩いたであろう通りを実際に歩いてみると、その穏やかさと懐かしさが、作品のトーンと重なって感じられるはずです。
観光地として賑わいすぎていない静けさも、この地の魅力。
派手さのない旅路のなかにこそ、ちかが見つけた「何でもない幸せ」があったように思えます。
アクセス情報:
・JR掛川駅から徒歩約10分。
・城内には資料館や展望台もあり、季節ごとに異なる表情を見せます。
モデル地紹介④:浜松市・中田島砂丘と浜松餃子

『ざつ旅』でちかが浜松を訪れた回では、広大な砂丘を一人で歩くシーンが強く印象に残ります。
その舞台となったのが〈中田島砂丘〉。遠州灘に面したこの地は、日本三大砂丘のひとつで、観光地というよりも、風景そのものが主役の場所です。
ちかが歩く描写では、足音が吸い込まれるような砂の感触や、風に揺れる髪の動きまでが繊細に表現されており、
「言葉を交わさない旅」の醍醐味が強くにじんでいます。誰もいない広い空間の中、ぽつんと佇む彼女の姿は、旅という行為の本質を静かに物語っていました。
その後、ちかが立ち寄った飲食店で登場したのが、〈浜松餃子〉。
円形に焼かれた餃子の中心に茹でモヤシが添えられている独特のスタイルは、地元でも定番の提供方法です。
アニメでは餃子を頬張りながら「うまっ」とこぼす彼女の表情がとても自然で、旅の疲れを癒やす“地元の味”として視聴者の記憶にも残りました。
静と動、空腹と満腹、孤独と充足──それらの振幅こそが、浜松回の静かな魅力でした。
アクセス情報:
・中田島砂丘へはJR浜松駅からバスで約25分。
・浜松餃子は駅近くの有名店(石松、むつぎくなど)でも味わえます。
モデル地紹介⑤:富士市・富士山本宮浅間大社と田子の浦

富士市を訪れたちかの旅には、これまでと少し異なる“敬意”のような空気が流れていました。
その理由は、彼女が足を運んだ場所──〈富士山本宮浅間大社〉が、長い信仰の歴史を持つ特別な地だからです。
浅間大社は、全国にある浅間神社の総本宮であり、富士山信仰の拠点。
作品中でも、静かに鳥居をくぐるちかの姿や、湧玉池の清らかな水を眺める描写が丁寧に綴られており、
旅の中に一瞬だけ差し込む“神聖さ”が印象に残ります。
そして、ちかが立ち寄ったもう一つの場所が〈田子の浦〉。
ここは、古くから多くの詩歌に詠まれてきた地であり、晴れた日には海越しに富士山を望むことができます。
波音と風の音だけが響くその場所に、ひとり佇むちか──その構図は、旅の終わりと次の始まりを静かに告げるようでもありました。
富士山を「見る」だけでなく、「そこにある空気を吸う」こと。
それが、彼女の旅の目的のようにも感じられる静岡編終盤の象徴的な場面です。
アクセス情報:
・富士山本宮浅間大社へは、JR富士宮駅から徒歩約10分。
・田子の浦港へは、JR吉原駅からタクシーで約15分。
聖地巡礼のポイントと注意事項
『ざつ旅』に登場する静岡のモデル地は、いずれも観光名所でありながら、地域の人々の暮らしの場でもあります。
そのため、聖地巡礼を楽しむ際には、以下のポイントに留意することで、旅をより心地よく、そして丁寧なものにすることができます。
アクセス情報の確認を忘れずに
作品中では「行き当たりばったり」の旅が描かれていますが、現実の巡礼では事前の交通手段の確認が重要です。
特に山間部や海辺のエリアでは、バスの本数が限られていることもあるため、乗換案内アプリや自治体の観光ページなどを事前にチェックしておくと安心です。
地元住民への配慮を大切に
アニメのカットと同じ構図で写真を撮影したくなる気持ちは自然なことですが、私有地や通学路、生活エリアでの撮影は十分な配慮が必要です。
カメラを向ける際には、周囲の状況をよく確認し、地元の方の邪魔にならないよう心がけましょう。
おすすめの巡礼時期
日本平や富士山周辺は、空気の澄んだ秋冬の時期が特におすすめです。
一方、焼津や浜松などの海沿いエリアは、春から初夏にかけてが過ごしやすく、地元の祭や市場の活気も楽しめます。
何よりも大切なのは、「作品の舞台に敬意を払う」という姿勢。
ちかの旅が、風景を奪うのではなく“そっと触れてゆく”ように描かれていたように、聖地巡礼もまた、静かなまなざしを持って歩くことから始まります。
まとめ:『ざつ旅』の世界を静岡で体感しよう
『ざつ旅』は、豪華な演出や大きなドラマではなく、「日常の隙間」にある旅の喜びを描いた作品です。
その物語が静岡の各地で展開されたことには、決して偶然ではない“選ばれた理由”があったように思えます。
視線の高さにある風景、静かに流れる時間、そしてそのなかにふと現れる美しい瞬間。
ちかが歩いた道を、同じようにたどることで、読者や視聴者もまた、自分だけの“ざつ旅”を見つけることができるのではないでしょうか。
旅に派手さはなくてもいい。
ガイドブックに載っていなくても、そこに物語が流れていれば、それはきっと特別な場所になる。
作品の舞台となった静岡の地を歩くことで、『ざつ旅』の世界が静かに現実と重なります。
その瞬間に出会うための旅を、ぜひ、あなた自身の歩幅で始めてみてください。



