キシリア・ザビの名の下に集ったジークアクスという部隊には、思想と兵力だけでは語れない“歪な忠誠”の構造がある。
その象徴とも言えるのが、シャリア・ブルとエグザベ・オリベというふたりの副官だ。
片や「ニュータイプの可能性」に賭けた旧世代の英雄、片や「ニュータイプに近づくために造られた存在」。
この対照的なふたりを追えば、キシリアという指揮官の真意、そしてジークアクスという部隊の“使い捨てられ方”が見えてくる。
なぜキシリアは彼らを配下に置いたのか?
なぜ彼らは命を削ってまで彼女に従ったのか?
その問いへの答えは、「忠誠」という言葉の内側にある。
このページでは、ジークアクス内部で形成される忠誠関係のレイヤーを可視化し、シャリア・ブルとエグザベ・オリベそれぞれの“正体”をあぶり出す。
ニュータイプ兵器の実験場となりつつあるジオン末期の戦場で、彼らがどう“選ばれ”、どう“棄てられていく”のか──その構造を、徹底的に掘り下げていく。
まずは、キシリア・ザビという指揮官の価値観と編成意図を見ていこう。
キシリア・ザビの戦略構造──思想と兵力の交点にいた女
ジオン公国軍突撃機動軍司令官、キシリア・ザビ。
彼女は単なる権力争いのプレイヤーではない。
「ニュータイプの管理」こそ、キシリアの軍略における核心だった。
彼女の配下には、単なる忠臣ではなく、異なる背景・出自を持つ“特異な副官”たちが集められていた。
それは偶然ではない。異なる忠誠をぶつけ合わせることで、組織全体を試し、統御するという発想──言い換えれば、「意図的な不安定さ」によって支配する手法である。
- ギレンとの対立を鮮明にし、独立した戦力を形成
- サイコミュ兵器の開発を主導、天然ニュータイプより“制御可能な兵士”を重視
- 忠誠の種類に“思想型・従属型・本能型”を混在させ、緊張構造の上でマネジメント
その結果、キシリア配下の部隊「ジークアクス」は、従来の軍事ユニットとは違う“思想実験場”となった。
アサーヴ、エグザベ、シャリア・ブル、そしてニャアン。
彼らはそれぞれ異なる文脈からキシリアに仕えているが、それゆえに彼女の意図を「読む能力」が仕える側に強く要求される構造でもあった。
この戦略において、シャリア・ブルとエグザベ・オリベは対照的な意味を持つ。
前者は「理想を語る者」、後者は「理想に届かぬ者」として──。
次章ではまず、シャリア・ブルという旧世代ニュータイプが、なぜキシリアの元で再登場したのかを紐解いていく。
シャリア・ブルの正体と忠誠──理想に殉じた旧世代ニュータイプ
TVアニメ『機動戦士ガンダム』に登場したシャリア・ブルは、本来であれば戦場に再び姿を現すことはない存在だった。
だが、ジークアクスという部隊に彼が再登板した意味は、単なる“戦力の補強”では済まされない。
シャリアは、キシリアが信頼を寄せる数少ないニュータイプであり、“理想の未来”を信じ続けた旧世代の希望でもある。
シャリア・ブルとは何者か
フラナガン機関によって育成されたニュータイプのひとり。
彼は人の心を“感じ取る”という能力に長け、サイコミュ兵器「ブラウ・ブロ」を操縦して戦果を挙げた人物として記憶されている。
だが、彼の本質は“兵器”ではなく、“理想主義者”である点にある。
- ニュータイプとは戦争を終わらせる希望だと信じていた
- 戦場ではなく、共感と理解による未来を夢見ていた
- その思想は、キシリアの「制御できる力」路線と微妙にズレる
それでも彼がジークアクスに招かれた理由──それは、キシリアにとって“思想的対比材料”として必要だったからだ。
忠誠か理想か──キシリアとの危うい共鳴
キシリアとシャリア・ブルの関係は、決して「命令と服従」ではない。
むしろ彼は、自分の理想を成就させるために、キシリアを“手段”として選んだとも言える。
その点で、エグザベのような“従属する副官”とは決定的に異なる。
だがこの関係は同時に、“理想が裏切られたとき”の断絶をはらんでもいる。
- キシリアが強化人間路線に傾倒した場合、彼は離反するか
- 理想のために再び“使い捨て”られるのではないか
- 「シャリア・ブルの死」が意味する“忠誠の限界”が見えてくる
ジークアクス内での立ち位置
彼はジークアクス内でも異質だ。
戦闘力は高いが、エグザベやアサーヴのような指揮系統には関与せず、単独行動が多い。
それはキシリアが彼に“役割”ではなく“象徴性”を求めていたことの裏返しでもある。
その象徴とは──「理想に殉じるニュータイプ」の姿。
だからこそ、彼がこの戦場でどのように最期を迎えるかは、ジオンのニュータイプ戦略全体の帰結を示すことになる。
次章では、そんなシャリアと真逆の位置にいる男──エグザベ・オリベの“造られた忠誠”について掘り下げていく。
エグザベ・オリベの正体と忠誠──命令に従う“人工の副官”
シャリア・ブルが“理想に殉じた男”だとするならば、エグザベ・オリベはその正反対にいる。
彼の忠誠は「信じること」ではなく、「造られたプログラム」に近い。
フラナガン機関で“養殖ニュータイプ”として開発されたエグザベは、戦闘適性を優先して育成された“制御可能な兵器”である。
ジークアクスの中で彼が担わされているのは、忠誠ではなく「義務」の遂行だ。
エグザベ・オリベの出自と設計思想
エグザベは天然ニュータイプではない。
人工的に感応力を強化された強化人間であり、意思の薄さが“忠実さ”として重宝された存在だ。
- 人格形成が“任務遂行用”に調整されている
- 感情の抑制と任務優先回路が強く植え込まれている
- 「自分の意思」でキシリアに仕えているのではない
これは忠誠というより“服従条件”であり、シャリアのような理想主義とは全く違う土壌で生きている。
忠誠の限界──“人間”であることの否定
エグザベは任務に忠実だ。
だが、それはあくまで「指示されたから」だ。
キシリアを信じているわけでもなければ、共鳴しているわけでもない。
その忠誠は脆い。
なぜなら、自分の判断で揺れることがないということは、「何かを守る意思」もまた存在しないことを意味するからだ。
- キシリアが別の命令を出せば、彼は誰でも殺す
- シャリアに同情しても、それを行動には移せない
- 命令と実行だけが彼の存在理由である限り、彼は人間ではなく“装置”として描かれる
だが、ジークアクスのような“忠誠が問われる部隊”の中にあって、その装置性はむしろ異物として浮かび上がっていく。
部隊内での摩擦と孤立
エグザベは部隊内で信頼されていない。
それは裏切りや反抗ではなく、“共感が不可能”な人物だからだ。
他の副官──特に天然ニュータイプのニャアンや、思考型のアサーヴにとって、彼の“無感情な忠誠”は不気味で、安心材料にならない。
孤立しながらも任務をこなす彼の姿は、「組織の中における忠誠装置」の象徴だ。
だからこそ、エグザベが“人間的な判断”を下す瞬間がもしあれば、それはジークアクスの忠誠構造全体を揺るがすことになる。
次章では、このふたりの副官──シャリア・ブルとエグザベ・オリベがどう“忠誠”のレイヤーを構成しているのか、対比と構造で可視化していく。
シャリア・ブルとエグザベの忠誠構造比較──思想か、制御か
ジークアクスという部隊において、シャリア・ブルとエグザベ・オリベは“同じ副官”という肩書きを持つ。
だが、その忠誠の本質は根本的に異なる。
シャリアは自らの理想をキシリアに預けたのに対し、エグザベは与えられた命令にキシリアを重ねただけだった。
忠誠の“構造”を視覚化する
| 項目 | シャリア・ブル | エグザベ・オリベ |
| 忠誠の動機 | ニュータイプ理想主義への共鳴 | 命令遂行プログラムへの従属 |
| 主従の成立要件 | キシリアが理想を実現すると信じた | キシリアが命令権限を持つから |
| 裏切りの可能性 | 思想の乖離があれば離反の余地あり | 命令以外の行動ができない=裏切れない |
| 精神的自由度 | 理想と行動が自律的に一致している | 自己判断が無い=自由も無い |
このように、忠誠という言葉の中身を解体してみると、ふたりの副官はまったく別の構造体であることがわかる。
キシリアの戦略と“忠誠の多様性”
このような異質な忠誠を同じ部隊に配するのが、キシリアのやり方だ。
思想に殉じる男と、命令に従う男。
共鳴と従属のコントラストを並べることで、組織の均衡を揺らしながら支配する──それが彼女の統治技術である。
だがこの技術には、致命的なリスクもある。
それは、「忠誠が崩れた瞬間、組織もまた瓦解する」という宿命的脆さだ。
忠誠は“対立軸”として機能していた
実はシャリアとエグザベの関係性は、相互理解ではなく、相互否定に近い。
理想を語る者は、命令だけで動く者を“人間ではない”と見做す。
命令で動く者は、理想を語る者を“非効率な存在”と処理する。
この対立軸は、ジークアクスという組織の中で重要なテンションを保っていたが、それが崩れた時──たとえばどちらかが死ぬ時──、もう一方の忠誠にも大きな揺らぎが起こる。
つまり、彼らの忠誠は「独立していた」のではなく、「対比されて機能していた」のである。
その歯車が外れた時、ジークアクスの“忠誠システム”全体が崩れる。
次章では、そうした“忠誠の危機”を迎えるきっかけとなる出来事──ギレン暗殺計画や、ゼクノヴァ兵器の導入がもたらす変化を整理していく。
今後の忠誠の行方と崩壊のトリガー──ギレン暗殺とゼクノヴァが揺らす軸
ジークアクスの“忠誠構造”は、静かな均衡のうえに成り立っていた。
思想と命令が交差する場で、シャリア・ブルとエグザベ・オリベはそれぞれの“限界”を持ちながら、それでも機能していた。
だが、その均衡はまもなく崩れ始める。
トリガーとなるのが、ギレン・ザビ暗殺計画と、新兵器ゼクノヴァの導入だ。
ギレン暗殺──忠誠の再定義が迫られる瞬間
キシリアが画策するギレン暗殺は、シャリアにとって“理想の反転”を意味する。
ジオンという国家の枠を超えた倫理的判断が求められる局面で、彼の忠誠は思想の再評価を迫られる。
- 正義のために暴力を選ぶことは正しいのか?
- 理想に殉じるとは、命令に殉じることではないはず
- キシリアの“支配意図”が明確になった瞬間、共鳴が消える
この時、シャリアが“自律した判断”を下せるか否かが、忠誠の存続を左右する。
ゼクノヴァ──制御兵器が奪う忠誠の意味
ゼクノヴァは、ニュータイプ兵士を効率的に制御・強化するために設計された兵器群だ。
それはつまり、“忠誠を不要にする”技術であり、エグザベの存在理由をも奪いかねない。
- 命令さえも必要としない、完全制御型の兵士
- 個の判断・意思は“ノイズ”として除去される
- 忠誠ではなく“応答”でしかない存在が増えていく
このシステムが導入されれば、エグザベの忠誠は「古いフォーマット」として淘汰される。
そして彼自身が“制御される側”へと落とされる可能性すらある。
忠誠という概念の崩壊
こうした事態が同時に進行することで、ジークアクスの忠誠構造は抜本的に変化していく。
命令が信仰に、信仰がシステムに、システムが“従属”に変わる。
その中でシャリアとエグザベがどう抗うのか、あるいはどう“飲まれていくのか”。
ジークアクスとは、忠誠という概念が「意志」から「技術」に奪われていく過程を描いた組織だったのかもしれない。
そしてその終末は、忠誠の継続ではなく──崩壊によって訪れる。
次章では、これまでの忠誠構造を再整理し、シャリア・ブルとエグザベ・オリベが最終的にどのような意味を持つキャラクターだったのかを総括する。
まとめ──忠誠という名の“装置”と“理想”が交差する場所
ジークアクスという部隊は、キシリア・ザビという存在の中にある“統治思想”を可視化した実験場だった。
そこに配された副官たちは、それぞれ異なる忠誠のフォーマットを背負っていた。
- シャリア・ブル:理想を貫こうとするニュータイプ
- エグザベ・オリベ:命令に従うことでしか生きられない装置
このふたりの対比によって浮かび上がったのは、忠誠とは「誰に従うか」ではなく「なぜ従うのか」こそが本質であるという構造だった。
ギレン暗殺、ゼクノヴァ兵器の台頭、そして制御という名の排除技術が進む中で、“忠誠”という言葉はますます空虚になっていく。
その中で、シャリアは理想の破壊者となり、エグザベは忠誠の犠牲者として、各々の帰結を迎えていく。
彼らの存在は、“信じて仕える”という行為の価値を、最後にもう一度問い直すための装置だったのかもしれない。
そしてそれこそが、ジークアクスという組織の本当の“正体”である。
記事内容の簡易表
| 要素 | 内容 |
| 主要テーマ | キシリア配下副官たちの忠誠構造 |
| 中心キャラ | シャリア・ブル/エグザベ・オリベ |
| 忠誠タイプ | 思想型(シャリア)/命令型(エグザベ) |
| 対比構造 | 理想に殉じる vs 制御に従う |
| 崩壊トリガー | ギレン暗殺計画/ゼクノヴァ兵器導入 |
| キシリアの意図 | 忠誠の混在による管理戦略 |



